特別講座vol.5 株式会社サカタのタネ ソリューション統括部 主幹 高木 篤史氏

講演テーマ
「高温障害とバイオスティミュラントの利用」
日時 :2025 年 10月 4日(土)  ( 13 :30~16:00 )
場所:技能文化会館
住所:〒231-0031 横浜市中区万代町2丁目4番地7 
今回の特別講座では、サカタのタネの高木篤史さんをお招きし、気候変動が進む中で注目されている「高温障害」への具体的な対策と、「バイオスティミュラント(BS)」の活用方法について学びました。
高木さんはまず、高温による植物の酸素不足について話されました。ナノバブルのように水中に酸素を取り込む工夫が有効であること、また、地温を下げるために水はけのよい土づくりを行うことが大切だと説明されていました。マグネシウムなどの葉面散布も有効で、植物の健康維持に役立つとのことでした。
特に印象的だったのは、「バイオスティミュラントは農薬ではなく、植物のサプリメントのような存在」という言葉です。人間がサプリで体を整えるように、BSは植物が本来持っている力を引き出すサポート役。過度な期待をするよりも、まずは植物が育ちやすい環境を整えることが大切だと強調されていました。
BSには大きく6つの分類があり、それぞれに特徴があり、腐植物質・有機酸や共生微生物、海藻抽出物・多糖類、アミノ酸・ペプチド、ミネラル、その他多くの成分が植物の生育を助けるそうです。
また、ゼオライトを覆土に使うと地温を4℃ほど下げることができ、バーミキュライトもプロの現場ではよく使われているそうです。
「高温時の種まき・育苗チェックリスト」を活用し、細かく対策を立てることが高温障害を防ぐカギだと教わりました。
BSについての具体的な製品の例もいくつか紹介がありました。
「GAXY」は特に効果が高く、肥料や農薬と混ぜても使える万能タイプ。「ホスカル」や「ホフマグ」は、肥料とBSを組み合わせた複合製品で、花や実の生育にも良い影響を与えるそうです。
高木さんは、まず「土壌分析」を行い、土づくりの状態を把握することが重要だと繰り返していました。
元肥には有機肥料を使い、追肥は必要な部分だけ化成肥料を与えるのが理想的。最近では、ドローンを使って悪い部分だけに追肥を行う農家も増えているそうです。
また、「E土壌II」というアプリでは日本全国の土壌データを確認できるとのことで、現代の農業はデータと科学の両立が求められているのだと感じました。
最後に印象に残ったのは、「BSは魔法ではなく、植物を支える“アシスト役”」ということです。
土を知り、肥料を理解し、環境を整えたうえで、BSを正しく使うことで初めてその力が発揮される。
そうした丁寧な姿勢こそが、持続可能な栽培につながるのだと改めて感じました。
この講座を通して、植物と土の関係、そして“支える技術”としてのBSの可能性を深く学ぶことができました。
一つひとつの資材に頼るのではなく、「自然と共に育てる」という姿勢を忘れずに、これからの栽培にも生かしていきたいと思います。
高木篤史(たかぎあつし)
1968年東京都生まれ。1994年(株)サカタのタネ入社。
野菜の育種、野菜産地育成および栽培指導に従事。
その後、有機資材(肥料)や機能性液肥の開発・推進業務に携わりながら、野菜・花の肥培管理と土づくりの指導を行う。
講師活動や専門誌、新聞、雑誌などの寄稿も多数あり。
<資格> 
土壌医・施肥技術シニアマイスター






